抗がん剤は、がんの治療に使われる薬剤であり、がん細胞を破壊したり、がん細胞の増殖を妨げたりする働きがあります。抗がん剤で、がん細胞だけをやっつけられるのなら、こんないいことはありません。しかし、現実は違います。

 

 従来の抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常細胞も傷つけてしまうため、吐き気や食欲減退、脱毛、肝臓障害など重い副作用を伴います。加えて、最新の抗がん剤は治療費がきわめて高額で、誰もがじゅうぶんな治療を受けられるわけではありません。

 

 がん細胞のまわりの血管は、大きなすき間がたくさんあります。このすき間に合うサイズの抗がん剤を用いると、血管のすき間を通り抜けた薬剤が、がんの組織に集まり、長い時間とどまって効果(註1:EPR効果という。こちらを参照)を発揮し続けます。

 

 私は、このがん組織の血管のしくみを利用して、正常細胞を傷つけず、がん組織にだけ集中的に薬剤を送り込む(註2:DDSという)、抗がん剤を開発しました。現在、さらに精度を高めた抗がん剤の開発にあたっています。

 

 しかし、がんを予防することの重要性は変わりません。

 

 抗がん剤の研究を続ければ続けるほど、私はがん予防の重要性を痛感しています。

 

 だからこそ、講演会などあらゆる機会をとらえて、一般のかたにこうお話ししています。

 

「がんは予防が一番たいせつです」と。

 

 そして、がんの発症のしくみがわかり、予防法の研究が進んだので、

 



「がんの予防には野菜スープが一番です」と訴えています。

 

 野菜スープは猛毒の活性酸素を消去する物質の宝庫

 

 がんをはじめ、ほとんどの病気や老化に密接にかかわっているのが、猛毒の「活性酸素」です。

 

 活性酸素とは、通常の酸素が変質したもので、激しく活性化し、他の物質を攻撃します。この作用を「酸化」といいます。鉄が錆びるのも酸化で、活性酸素のしわざです。この状態が人体でも起きるのです。

 

 活性酸素は、紫外線や放射線、化学物質、呼吸で取り入れた酸素やタバコ、食品添加物など、あらゆるものから発生して、細胞や遺伝子を攻撃します。

 

 がんは、遺伝子が活性酸素によって損傷されて、細胞が突然変異を起こし、段階を経て成長したものです。がんが発生するすべての段階に活性酸素がかかわっています。私たちは生きている限り、活性酸素の攻撃から逃げられません。

 

 しかし、活性酸素を抑える方法はあります。それは、野菜を食べることです。

 

 野菜には、活性酸素を消去する働きをする物質が多量に含まれています。これを「抗酸化物質」といいます。野菜は抗酸化物質の宝庫です。野菜をたっぷり食べ、体内に抗酸化物質を取り込んでおけば、活性酸素を撃退し、がんを予防することができます。

 

 私は野菜の抗酸化物質を用いて、さまざまな実験を行いました。その結果、野菜は煮てスープにすることで、最強の抗酸化パワーを発揮することがわかりました。猛毒の活性酸素も、野菜スープを加えると一瞬で消去されてしまうのです。

 

 野菜に含まれる各種の抗酸化物質が連携して害を防ぐ

 

 野菜に含まれる抗酸化物質には、さまざまな種類があります。

 

 代表格はファイトケミカルです。ファイトケミカルは、植物が紫外線や害虫などから、自らを防衛するために作り出す物質の総称で、植物の色素や香り、苦味などを構成している成分です。

 

 トマトのリコピン、ホウレンソウのルテイン、ニンジンやカボチャのカロテノイド、大豆のイソフラボン、緑茶のカテキン、タマネギのケルセチンなど、ファイトケミカルは身近な野菜や果物、豆類、お茶にたっぷり含まれています。

 

 ファイトケミカルの種類は1万種以上にのぼり、それぞれ多様な働きをします。がんに対しては、@遺伝子を傷つける活性酸素を消去する、A発がん物質を解毒する、Bがん細胞の成長・増殖を抑える、C免疫力を強化する、などが挙げられます。

 

 野菜にはほかにも、ビタミンCやビタミンEなどのビタミン類、グルタチオンなど多種類の抗酸化物質が含まれています。これらが連携して、活性酸素を消去してくれるのです。

 

 活性酸素は、がんだけでなく、老化や動脈硬化、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病、アレルギー性疾患、アルツハイマーなど多くの病気の原因でもあります。

 

 野菜スープはがん予防に確実につながる

 

 日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人はがんで亡くなる。このように聞くと、がんへの恐れで身がすくむ思いがします。そのような怖いがんを「野菜スープを食べたくらいで、予防できるのだろうか?」と考えるかたもいるでしょう。

 

 しかし私は、国内外の多くの調査や研究、そして私の研究から、野菜スープを食べるとがん予防に確実につながると言い切って差しつかえないと思っています。

 

 野菜スープの作り方は、このうえなく簡単です。多種類の野菜を鍋に入れ、水を注いで煮るだけです。